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世界の住宅から vol 004 スイス1/1

「世界の住宅から」では様々な国や地域の住宅をご紹介していきます。 今回は、ヨーロッパの中でも観光地として人気のある「スイス」でよく見かける住宅の特徴をまとめました。 自然が豊かで、地方によって建物のバリエーションも多い国です。さて、どんな住宅があるのでしょうか。

画像はイメージです

スイスの住宅スタイルは?

スイスの家、というと木造の三角屋根の建物を思い浮かべる方も多いかと思います。
シャレースタイルと呼ばれる家の造りは、主にスイスの山岳地帯で見られます。
手入れの行き届いたお花が窓辺に飾られ、外を歩く人の目を楽しませてくれます。
しかし、スイスの家は全てがシャレースタイルという訳ではありません。
ドイツ語、フランス語、イタリア語など複数の言語圏から成るスイスでは、地方によって複数の建築様式があります。

地方によってこんなに違う!スイスの住宅

日本ではでデザインや間取りこそ違いますが、住宅に求められる機能などは共通点が多く、見た目にも似ている造りの住宅が日本全国に点在しています。
しかし、スイスでは地方によって住宅に求められる性能や造りは大きく変化します。

①ベルナーオーバーラント地方のシャレー
シャレーと呼ばれる木造の家は、もともと農家を示す言葉でしたが、最近では貸別荘やホテルにも使われています。
スイスといえば人気の山岳観光地、グリンデルワルトやグシュタードなどがあるベルナーオーバーラント地方では、シャレー様式の建物のホテルがほとんどです。
三角屋根が建物の両側に大きく張り出し、軒下には冬に備えた蒔が積んであります。
窓辺には必ずと言っていいほど、花が飾られています。
シャレー様式のホテルは三角屋根になるため、箱型のホテルと比べると部屋数はあまり取れません。
階数の高さに制限がある自治体もあるため、20部屋くらいの小規模なホテルが一般的です。
シャレーの軒下には建築年が刻まれているものもあります、観光の際には見て歩くのも面白いでしょう。

②エメンタール地方の農家
エメンタール地方はスイスの首都、ベルンの東に広がる丘陵地帯です。
なだらかな斜面に緑豊かな森と牧草が広がり、頂きの白いアルプスの峰が連なる景観が印象的です。
エメンタールチーズや穴あきチーズの産地になります。
この地方の家屋は、両側に大きく張り出す屋根と、屋根の下の半円形のアーチが特徴的で、住宅、牛舎、納屋などが同じ建物の中に入っています。
多くの家の地下には、この地方で豊富に出る砂岩で作られた貯蔵室があります。
比較的低温で保たれる地下室は、チーズの保管には最適です。
また母屋とは別に、乾燥牛肉を保管する貯蔵庫も設置されていることが多く、火災などから財産を守るため、家の貴重品もそこに保管する習慣があります。

③アッペンツェル州の家
スイスの東北部、アッペンツェル地方は昔ながらの伝統が残る地です。
ヨーデルなどの民族音楽の宝庫とも言われます。
メインストリートを歩くと、カラフルに彩られた家並みに目を引かれます。
そして魚の鱗のように張られた家壁も特徴的です。
住居の棟は、家畜小屋の納屋の棟と直角に配置されています。
窓のある切妻の前面を谷の下方に向けて、太陽光を取り入れる工夫があります。

④ツェルマットの農家
こげ茶色の木造民家が目につきます。
焼け焦げたように黒くなった木製の壁と、石の屋根が印象的です。
一階部分は石造り、二階から上は校倉づくりの家が多く、屋根は地元の鉄平石を使います。
屋根には年輪を重ねた苔が見られます。
農家にしては階段の高い民家が多いことが特徴で、厳しい冬の寒さを防ぐために、窓が小さくなっています。
ねずみ返しのついた建物は、パンを作るためのライ麦の貯蔵庫となります。

⑤エンガディン地方のエンガディンハウス
エンガディン地方は、スイス東南部に位置し、エンガディンハウスと呼ばれるこの地方特有の家屋が並びます。
家のあちこちには木材が使われていますが、モルタルで隠されていて、外観は石造理に見える造りです。
家屋の壁にはスグラフィットと呼ばれる装飾の文字や絵画で彩られています。
壁に漆喰を塗り、上の層の部分を削り取る技法は、イタリアからヨーロッパに伝えられたものです。
厳しい寒さを防ぐために、エンガディンハウスの家壁は70~90㎝と、とても厚くできています。
窓は寒さ対策や、室内に光を取り入れるために、内側の壁面から、外側に大きく開いています。
エンガディンハウスは、同じ屋根の下に住居、家畜小屋、納屋が一緒に入っています。

⑥スイス南部 石造りの家
アルプスの南側で、ティチーノ地方は陽光豊かで、石造りの家屋が目につきます。
ティチーノ地方はシラカバ、ブナ、クリなどの広葉樹が多く、建築に適した真っ直ぐな樹木があまり手に入りません。
そのため身近な材料の石材が利用されるのです。

最後に…

スイスの住宅は、その地域にある自然の建材を用いることが多いため、地域によりその建物の個性が変化します。
自然豊かな国だけに、たくさんの無垢材が使用され、日本人から見ると贅沢な造りにも見えるでしょう。
石や木材を上手く取り入れ、草花で綺麗に彩られたスイスの庭は、ガーデニングのお手本にも良いのではないでしょうか。

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